獲物がいたぜ2

　「いらっしゃいませ」という言葉は、それを口にすることに慣れてくると、相手が無反応でも自分が傷つかなくなってくる。

たまには「いらっしゃいませ」をおはようございますとかこんばんはとかに変えてみましょう。

相手が無反応ということが、これほど心に来るものなのかと思うことでしょう。

　全国の東急ハンズにて、実演販売で商品を売りまくり１店舗の売上に異常値を叩きだし、全国的に注目されることになった河瀬和幸さんの著書でも、

「いらっしゃいませはお客さんを遠ざける言葉だ」と言われています。

なんかこう、やっぱり、いらっしゃいませって言われると「売り込まれるんじゃないか」って思うんですよね。ドラッグストアだとその言葉のデメリットはまだマシなのかも知れませんが、これが百貨店や専門店だとなおさらだと思います。特に気の弱い方にとっては。

防犯目的とか賑やかしだったら別に「いらっしゃいませ」という聞き飽きた言葉じゃなくて、もうちょっと違う呼びかけでもいいでしょうに。

「おう！よく来たな！」

とか、銅鑼鳴らすとか。

いらっしゃいませは、スプレーの様に目標を特に定めず撒き散らす言葉。だから無視されてもそれほど心に傷はつかないし、後ろを向いたままだって言える。

対して挨拶は水鉄砲の様に対象に向かって一直線に向かう筋です。ですから、無視されたらとても心に堪えます。

無視されても傷つかない言葉を投げかけるって、それは相手を人として扱っていないのと同じですよね。我々は気がつかないうちに、お客さんを人扱いしていなかったのです。「最高の接客応対サービスで」とかなんとか抜かしながらね。

まぁもちろん、相手の目を見て、微笑み、それから会釈して「いらっしゃいませ」とはっきり一語一語、口にすることが出来れば問題はありません。

ただそれをするにも、一度、いらっしゃいませを一日中封印し、全て挨拶に代え、

「相手に呼びかけるということはどういうことなのか」

を実感してからのほうが良いでしょうね。

　因みにお客さんの方も挨拶されることには慣れていないようで、「そんなこと初めて言われたわよ」なんておっしゃっていました。ということはこの部分だけでも変えてみれば、そのお店は差別化ではなく「独自化」できるのかもしれませんね。